債務整理とは?債務整理の種類とそれぞれのメリット、デメリットを解説します。

2023.02.01 債務整理
債務整理とは?債務整理の種類とそれぞれのメリット、デメリットを解説します。

4種類の債務整理手続きの概要

債務整理の方法は、「任意整理」「特定調停」「自己破産」「個人再生」の4種類があります。

それぞれの手続きの仕組みとメリットとデメリットがわかれば、どの手続きがベストかの判断がしやすくなると思います。

任意整理」「特定調停」「自己破産」「個人再生」の順に手続きの仕組みとメリット、デメリットを説明します。

任意整理手続きについて

任意整理とは、弁護士または司法書士が債権者(消費者金融や信販会社など)と交渉をして、支払いを楽にする手続きです。交渉内容は主に、将来に掛かる利息のカットや毎月の返済額の減額です。

任意整理のメリット

 

  • メリット① 将来利息をカットしたうえで3年~5年の長期分割払いにすることによって、毎月の返済額を下げることができる。
  • メリット② すべての債権者を手続しなくてはいけないわけではなく、必要な会社のみ選んで手続きをすることができる。
  • メリット③ 裁判所がかかわる手続きではないため、資料集めをしたりといった依頼者の負担が少ない。
  • メリット④ ギャンブルや浪費といった借り入れの原因に関わらずに手続きをすることができる。
  • メリット⑤ 延滞していて債権者から督促がなされている場合、その督促を止めることができる。

 

任意整理のデメリット

 

  • デメリット① 借り入れ元金を減らしてもらうことはほとんどできない。
  • デメリット② 一部、将来利息のカットに応じてくれない業者が存在する
  • デメリット③ 取引期間が短い場合や、取引の態様によっては利息のカットや長期分割ができない場合がある。
  • デメリット④ 信用情報機関に情報が登録され、借り入れが一定期間できにくくなる。完済後5年間とされています。

 

任意整理の手続きの流れ

 

  • ①任意整理の手続きは、最初に司法書士に依頼をします。
  • ②その後、司法書士が受任通知という書類を各債権者に送ることで、督促がストップすることになります。
  • ③そこからおおむね3か月ほどで債務額が確定し、債権者と司法書士が和解案を取りまとめます。
  • ④依頼から半年ほどしたら和解の内容に沿って返済を開始します。

 

※依頼から返済開始までの期間に報酬等を分割支払うことが一般的です。

※また、複数社から借り入れをしている場合、支払いの管理を司法書士に依頼することができます。その場合は、司法書士に複数社分の返済額を毎月一括で振込をして、司法書士から各債権者に返済をすることになります。

特定調停

特定調停とは、簡単に言うと裁判所を利用して、裁判所の調停委員と債権者との3者で利息のカットや長期分割などの和解を行う手続きです。

個人で行う任意整理と考えるとわかりやすいかもしれないです。

特定調停のメリット

 

  • メリット① 自分で手続きをするため、任意整理と比較して費用がほとんどかからない。
  • メリット② 調停委員が間に入るので、ある程度妥当な返済計画で和解することができる。ただし、任意整理と違い、代理人ではないので、債権者の意向も反映される場合がある。
  • メリット③ 督促が一定の間停止する。任意整理の場合は司法書士が介入中は督促が停止するのに対して、特定調停の場合は、調停が終了するまでの期間となります。

 

特定調停のデメリット

 

  • デメリット① 裁判所に調停の申し立てを行うので、申し立て書類の作成が簡単ではない。
  • デメリット② 督促を止めるまでに時間がかかる。裁判所に申し立てを提出して受理された後になるため、任意整理と違い即日というわけにはいかない。
  • デメリット③ 裁判所での調停のため、平日の日中に裁判所に行かなければならないため、場合によっては仕事を休む必要がある。
  • デメリット④ 特定調停に応じない業者があるため、無駄足になる可能性がある。

 

特定調停の手続きの流れ

①特定調停の申し立て先
特定調停を開始するには、まず担当の簡易裁判所への申立てが必要です。担当の簡易裁判所は、相手方の住所、居所、営業所又は事務所の所在地のある地区を受け持つ簡易裁判所です。申立ては書面によって行わなければならないため、申立書を作成するところから始まります。

②特定調停の申し立て書類の作成
特定調停を申立てる裁判所が決まったら、そこで申立書のひな形を受け取り、申立書を記入していきます。

③特定調停の申し立て
特定調停の申立書類一式が完成したら、担当の簡易裁判所に提出します。このとき、申立手数料と予納郵便切手も一緒に提出しなければなりません。そのほか、調停委員への参考資料として、家計の様子がわかるメモ・給与明細書・源泉徴収票・税金の確定申告書など収入や支出がわかるものが必要になります。
申立が認められると、裁判所から相手方(債権者)に申立書のコピーが郵送されます。

④事情聴取期日
調整期日の前に調停の準備のための期日があり、調停委員に家計や収入などを加味した返済能力などを詳しく説明し、調停で解決可能かどうか判断してもらいます。この期日には、相手方は参加しません。

⑤調整期日
調整期日の話し合いでは調停委員が間に入って行い、相手方と直接交渉することはありません。事情聴取期日の内容を整理して、相手方の意見も聞きながら返済額等を調整します。

⑥調停成立と不成立
申立人の希望と相手方の希望が一致すれば、そこで調停成立となり、あとはその合意に沿って返済を行っていくことになります。

自己破産

自己破産手続きとは、借金の返済額が収入に比べて課題になってしまった場合に、裁判所に「免責許可」の申し立てをして、借金の返済を免除してもらう手続きのことです。

免責許可が下りた後は、税金等の一部を除き借金を返済する必要がなくなります。

自己破産のメリット

 

  • メリット① 非免責債権を除き借金がなくなり、返済が不要となる。
  • メリット② 無職や生活保護受給中の場合など、返済ができない方も選択できる手続きであり、自己破産手続きによって、生活保護が受けられなくなることはない。
  • メリット③ 債権者による給料差し押さえなどの強制執行を止めることができる。

 

自己破産のデメリット

 

  • デメリット① 一部の債権者を除いて手続きをすることができない。お世話になっている親戚などからお金を借りている場合でも、その人を除外することはできない。
  • デメリット② 同一家計の収支等について裁判所に報告する必要があるため、家族に内緒で手続きすることが難しい。
  • デメリット③ 信用情報機関に情報が登録され、借り入れが一定期間できなくなる。登録後5年~10年とされています。
  • デメリット④ 住所氏名が、「官報」という国が発行する機関誌に公告される。
  • デメリット⑤ 免責許可決定が出るまで、警備員や保険の外務員などの一定の職業につけない場合がある。
  • デメリット⑥ 20万円以下の預貯金や高額でない家電、車などの財産は残すことができるがそれ以上の財産については手放す必要がある。

 

自己破産の種類

自己破産には、「管財事件」「少額管財」「同時廃止」の3種類があります。

どの手続きになるかは、申立人の経済状況や借金額、借入の態様などを考慮して裁判所により判断されます。

 

管財事件

管財事件とは、高額な財産がある場合や、申立人が経営者や自営業者であるケース、借金をした原因に問題(ギャンブル・浪費など)があるケースで取られる手続きです。

 

管財事件では、裁判所から選任された破産管財人が、申立人の借金について調査します。その上で、申立人が所有する財産を換価処分して債権者に分配する業務を行います。

管財事件では破産管財人の報酬も支払う必要があるので、同時廃止よりも費用が高くなり、手続き終了までの期間も長くなります。

 

同時廃止事件

同時廃止とは、預貯金や不動産、高価な財産などがない場合の自己破産手続きです。

管財事件と比べて、破産管財人がつかない分費用もあまりかからず、時間もかかりません。

 

少額管財事件

管財事件のうち、「少額管財事件」と呼ばれる手続きがあり、大都市の裁判所など特定の裁判所で運用されています。

少額管財事件は、管財事件よりも手続きが簡略化しており、裁判所に納める予納金が少額で済むメリットがあります。

ただし、少額管財事件は、弁護士が申立代理人となる必要がある点など注意が必要です。

自己破産の手続きの流れ

①司法書士に依頼をすることで、各債権者に受任通知が届き、督促が停止する。

②司法書士が債務の調査及び収入や支出を確認して、破産申立書の作成をする。

③通帳や、借入の経緯説明書など必要な書類等の準備

④③と並行して、司法書士報酬等の分割支払い

⑤書類作成及び分割支払いが終わったら裁判所に申立て書提出

⑥裁判所での面接(破産者審尋、弁護士に依頼した場合は原則不要)

⑦自己破産手続きの開始決定(同時廃止の場合は、決定と同時に自己破産手続きの廃止決定もなされる)

⑧管財事件の場合は管財人が選任され、財産の換価配当業務などが行われる

⑨裁判所での面接(免責審尋)

⑩免責許可または不許可決定

個人再生

個人再生手続とは,裁判所に申し立てることにより、全債権者に対する返済総額を5分の1から10分の1程度に減らす手続きです。

裁判所が認めれば,減額後の借金を返済(原則3年の分割)することにより,残りの債務(養育費・税金など一部の債務を除く)が免除されます。

個人再生手続きのメリット

 

  • メリット① 債務圧縮効果が、任意整理よりも大きい。5分の1に圧縮されるので金額的にメリットは大きい。
  • メリット② 住宅ローンを除いて手続きできる場合があるので、家を手放さなくてよい。
  • メリット③ 自己破産ができない場合でも個人再生はできるケースがある。
  • メリット④ 自己破産と違い、資格職業の制限はない。
  • メリット⑤ 債権者の強制執行を止めることができる。

 

個人再生手手続きのデメリット

 

  • デメリット① 一部の債権者を除いて手続きをすることができない。お世話になっている親戚などからお金を借りている場合でも、その人を除外することはできない。
  • デメリット② 同一家計の収支等について裁判所に報告する必要があるため、家族に内緒で手続きすることが難しい。
  • デメリット③ 信用情報機関に情報が登録され、借り入れが一定期間できなくなる。登録後5年~10年とされています。
  • デメリット④ 住所氏名が、「官報」という国が発行する機関誌に公告される。
  • デメリット⑤ 自己破産と違い、借金がある程度残ってしまう。
  • デメリット⑥ 小規模個人再生の場合は、債権者の過半数の同意が必要なため手続できない場合がある。

 

個人再生の種類

個人再生手続きには小規模個人再生と給与所得者等再生があり、それぞれ条件があります。

 

小規模個人再生

将来的に継続また反復して収入があり、借金が5000万円を超えない場合に手続きができ、債権者の過半数の同意が必要となる。

 

給与所得者等再生

小規模個人再生に加えて、給与変動の幅が年間20%以下である場合に手続きができ、債権者の同意は不要となっている。

 

個人再生手続きの流れ

①司法書士へ依頼し、受任通知が到達することで督促が止まる。

②司法書士が債務の調査及び収入や支出を確認して、個人再生申立書の作成をする。

③通帳や家計簿など必要な書類等の準備

④③と並行して、司法書士報酬等の分割支払い

⑤書類作成及び分割支払いが終わったら裁判所に申立て書提出

⑥個人再生委員が選出され、債務履行テストが開始する。

⑦個人再生手続きの開始

⑧債権の届け出及び調査

⑨再生計画案の作成

⑩再生計画案の決議

⑪再生計画の認可・不認可

⑫個人再生手続きの完了及び返済開始

まとめ

毎月の支払いが多すぎて生活が苦しい、借金のことを考えるだけで気持ちが不安になってなにも手につかなくなるといったときに、どうしたらよいのかを簡単ではありますがまとめてみました。

今の状況が良くないことはわかっていてもなかなか一歩を踏み出せないという方も多くいらっしゃると思います。

そういった方の不安が少しでも解消できたなら幸いです。

弁護士や司法書士は、ご相談者様と一緒に悩んでともに解決に向かっていくパートナーですから、まずは相談だけでもしてみてはいかがでしょうか。

この記事を監修したのは、

admin

寺島 能史

東京司法書士会
会員番号: 第6475号
認定番号: 第901173号