任意整理後の一括返済で注意するべきポイントを解説

2023.10.10 任意整理
任意整理後の一括返済で注意するべきポイントを解説

任意整理した後に一括返済をすることはできるのでしょうか。

「現在は一括返済できるようになった」「早く完済したくなった」など、任意整理後に一括で返済したくなるケースも少なくないものです。一括返済のメリットや注意点など、気になる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、任意整理後に一括返済することはできるのか、一括で返済した場合のメリット・デメリットや注意点などについてわかりやすく解説しています。一括返済する際の流れや方法についても紹介していますので、返済方法を考える際の参考としてお役立てください。

任意整理した後に一括返済することはできるのか

任意整理の手続きが完了した後に、一括返済することはできるのかについて解説します。

任意整理後の一括返済は可能

任意整理では借金の利息をカットし、35年かけて完済する計画で和解案を提出して債権者から合意を得るのが一般的です。

そのため、任意整理後には計画に沿って毎月一定額を返済することとなりますが、分割にせず、一括で返済することも可能です。任意整理で分割での返済計画を認めてもらっているのに一括返済を選んだ場合、以下のようなメリットとデメリットがある点を理解しておきましょう。

一括返済のメリット

一括返済の大きなメリットとしては、借金を一気にゼロにできるため、精神的な負担が軽くなる点が挙げられます。

いつまでちゃんと払えるだろう」「将来的に払えなくなったらどうしよう」という不安からも解放されるため、転職や独立を決めやすくなる場合もあるでしょう。

任意整理後数年が経過し、収入にも余裕が出てきて残債も少なくなっているなら、残りの返済を一気に返してしまうのもよいでしょう。

一括返済のデメリット

任意整理をした際、既に利息などをカットしてもらっているため、たとえ一括返済したとしても借金は減額されないケースがほとんどです。

また、一括返済してもブラックリスト入りしている事実は変わりません。任意整理でブラックリストに掲載される期間は「手続き開始から完済後5年間」となっているため、一括返済した時期によっては多少短縮することができますが、完済後5年は待たなければなりません。

無理して一括返済したことで経済的に苦しくなっても、対処できる選択肢が少ない点もデメリットと言えるでしょう。対処法が制限される理由については、後で詳しく解説します。

任意整理後の一括返済で注意するべきポイント

任意整理後の一括返済を希望する場合に、注意するべきポイントについても解説します。

「やっぱりやめる」と言えないため慎重に

任意整理後に一括返済する場合、その旨を申し出た後には必ず一括返済しなければなりません。一括返済すると言って返済をしないでいた場合、期限の利益喪失を理由に、残債の督促を受ける場合があります。

一括返済しようと思ったけど、やっぱりやめる」と気軽に変更することはできないため、決定は慎重に行うようにしましょう。

返済が苦しくなっても借り入れできない

任意整理を一括返済するデメリットでも解説した通り、一括返済しても基本的にブラックリスト期間の長さは変わることがありません。ブラックリスト入りしている間は、新たなローンや借り入れができなくなります。

そのため、一括返済後急に経済的な余裕がなくなった場合、借入先を見つけることが難しくなってしまうのです。

たとえ借金を作らず、贅沢をしないように真面目に働いて暮らしていても、不慮の事故や倒産、家族の介護など、どのような理由で経済的に苦しくなるかはわかりません。ブラックリスト期間中に預貯金や経済的な余裕がない場合、こうしたリスクがある点を理解して一括返済を検討することが大切です。

一括で支払っても返済総額はあまり変わらない

一般的な借金であれば、一括返済することで利息を大きく減らせるメリットがあります。

しかし、任意整理で既に利息がカットされている債務の場合、苦労して一括返済しても返済額はあまり変わらない場合が多いのです。

精神的な負担を減らしたい場合や、ブラックリスト期間を少しでも短縮したいといった理由がある場合以外には、任意整理後の一括返済にはあまりメリットがないことも知っておきましょう。

任意整理後に一括返済する方法

上記を踏まえた上で、任意整理後に一括返済する方法について解説します。一括返済する際の流れは、自身で返済している場合と専門家へ代理弁済を依頼している場合とで少し異なります。

自身で返済している場合

任意整理後に自分で振り込むなどして返済している場合、債権者となっている金融機関の窓口へ直接連絡し、一括返済したい旨を伝えます。債権者が複数ある場合には、一括返済したいすべての債権者へ同様の連絡をします。

任意整理では対象とする債権者を選べるため、特定の返済だけを優先して完済することも可能です。とはいえ、それによって他社への返済が滞ることのないように注意しましょう。

専門家へ返済代行を依頼している場合

任意整理を依頼した弁護士や司法書士などの専門家へ借金の返済代行を依頼している場合は、その専門家の事務所へ連絡をします。すべての債務を一括返済するのか、返済期日や返済方法などについても相談するとよいでしょう。

いずれの場合も、一括返済と返済期日を申し出た後に変更することはできないため注意しましょう。

例えば、毎月15日が返済期日の借金について、5日前の10日に一括返済すると申し出た場合、10日までに必ず一括で返済しなければなりません。

10日を過ぎても返済しない、または15日に通常通りの分割払いしかしないといった場合に、期限の利益喪失を主張され法的措置を取られる可能性もあるのです。

任意整理後の一括返済によるメリットはあまり大きくありませんが、経済的に余裕がある場合や、分割払いによる精神的な負担が大きい場合、残債がわずかな場合には、一括返済を選択して早めに完済するのもよいでしょう。

返済方法で迷ったら専門家へ相談してみよう

一括返済できるけど、した方がいいのかわからない」という場合、慎重に考えて判断することが大切です。自身で債権者へ振り込んで返済している場合でも、返済方法で迷った場合は一度専門家へ相談してみるとよいでしょう。

みどり法務事務所の「スマサポ」では、任意整理を含む債務整理の実績豊富な専門家が相談に対応しています。任意整理後の返済方法や、他の債務整理に関する疑問なども丁寧に伺い、最適な解決方法を提案することが可能です。お問い合わせはフリーダイヤルか、専用のフォームよりお気軽にご連絡ください。

まとめ

任意整理後に返済している月々の支払いをまとめて一括で返済することは可能ですが、返済総額やブラックリスト入りの事実は変わらないため、あまりメリットは大きくありません。

一括返済した後に経済的に苦しくなっても新たな借金ができないため、リスクの方が大きくなる可能性もあるでしょう。場合によっては、一括返済を申し出た後に撤回したことで法的措置に出られてしまう可能性もあります。

債務の残りがわずかな場合や、精神的な負担から解放されたい場合には一括返済もおすすめです。返済方法で迷った場合は専門家へ相談しながら、慎重に決めるようにしましょう。

この記事を監修したのは、

admin

寺島 能史

東京司法書士会
会員番号: 第6475号
認定番号: 第901173号