借金減額のしくみは?メリットやデメリットから考える債務整理の方法
通常、借金は貸金業者と契約書(金銭消費貸借契約書)をかわしその契約内容に従って返済していくものです。しかし、不景気による収入の減少、失業、病気、あるには事故など予期せぬ突発的な事象が起きて返せなくなる方もおられます。
ご自身で貸金業者に返済の相談をしても、契約をたてに、借りたものは全額返すよう迫られ、なかなか相談がうまくいかないことが多いです。
そんな時、あなたの味方になるのが専門家による債務整理です。
以下では債務整理の方法、借金減額のしくみ等を専門家がご説明いたします。
債務整理の種類~私的手続
一口に債務整理と言いましても大きく分けて私的手続と公的手続に分けられます。
まず私的手続の代表は、任意整理と呼ばれるものです。
任意整理は司法書士または弁護士が依頼者の代理人となって相手方である貸金業者と個別に返済に関する交渉をするものです。
なお依頼者の代理人になれるのは司法書士と弁護士のみです。
任意整理は手続する相手を選ぶことができますので例えば車のローンとか知人、親族等個人からの借り入れを除外して行うことができます。
任意整理のメリットとして将来発生する利息のカットと長期分割(通常3~5年)することによって毎月の返済額を減らすことができます。
さらに、お取引が長期間(おおむね平成19年~20年以前)ある場合は、過払い金が発生し借金の元本そのものを減らせる可能性もあります。
債務整理の種類~公的手続
特定調停
これは裁判所を通した手続きになります、裁判所と言っても裁判官が判断するわけではなく、あくまで当事者同士が返済に関する話し合いを行うだけです。
メリットとしては任意整理と同じように、将来利息のカットや長期分割による毎月の返済額の減額ができます。
話し合いがまとまれば裁判所が調停調書という公文書が作成します。
特定調停は一般的には任意整理をするよりも低廉な費用でできるメリットはあります。
ただし、通常、調停条項には懈怠条項といって毎月の返済分を期日までに支払わないと、分割返済の効力が失われて残金を一括返済しなければならなくなり、返済しなければあなたの財産(例えば給料など)を差し押さえできることができます。
任意整理にも同じような懈怠条項は付きますが、返済できなくなったからといってすぐに差し押させることまではできず再交渉の余地もありますし、差し押さえするにしても裁判手続きが必要になります。
任意整理にしろ特定調停にしても将来利息の免除や、毎月の返済額を減らせたり出来ますが原則として元本の返済は必要になりますし返済期間にも限りがあります。
そのため借金総額そのものが大きい場合は逆に毎月の返済が上がってしまうことも起こります。
そのように任意整理あるいは特定調停では効果がない方のための借金減額方法として、個人再生手続きと破産手続きがあります。
個人再生
任意整理は将来利息のカットができるのですが、明確な法的根拠があってできるわけではありません。
貸金業者としても契約を押し通すよりもいくらか譲歩して払いやすくしたほうがメリットがあるため応じてくれるのですが、借金の額が大きいと任意整理しても毎月の返済額を減らすことができない場合や、任意整理に理解のない貸金業者から借りている場合は交渉がうまくいかずに和解ができないこともあります。
そうした方のために個人再生手続きがあります。
これは任意整理と違いまして借金減額の法的根拠として民事再生法という法律に則って行うものです。民事再生法は本来企業等法人を対象にした倒産処理制度です。
そのため手続が大変複雑なのですがこれを個人の借金整理の方法とするために簡素化したものを個人再生手続きと呼びます。
借金などの返済ができなくなった人が,全ての債権者に対する返済総額を少なくし,その少なくなった後の金額を原則3年間で分割して返済する再生計画を立て,債権者の意見を聞いたうえで裁判所の認可を得られれば,その計画どおりの返済をすることによって,残りの借金(養育費・税金など一部の債務を除く)などが免除されるという手続です。
個人再生には2つのやり方があります。
①小規模個人再生
将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ、再生債権(債務者が抱える債務のうち、公租公課を除いたもの)の総額が5000万円を超えない個人である債務者が行う、民事再生法13章1節に規定する特則の適用を受ける民事再生手続です。(同法221条1項)。
これは本来、個人事業主を対象とした手続きになりますが実際には普通のサラリーマンのような給与所得者や年金生活者の多くがこちらを利用しております。
利用できる条件は
- 借金などの総額が5000万円以下であること(ただし住宅ローンの債務は除く)
- 将来にわたり継続的に収入を得る見込みがあること
②給与所得者等個人再生
小規模個人再生を申し立てることができる者のうち、給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みが大きく、かつ、その変動の幅が小さいと見込まれるものが行う、民事再生法13章2節の適用を受ける民事再生手続をいう(同法239条1項)。
主にサラリーマンのような収入が安定した方を対象にした手続ですが、上記の小規模個人再生を利用する方も多く給与所得者の方は両方使えますのでメリットがある法を選べばよいでしょう。
また、この2つの手続を行う際に住宅ローンをある方は、住宅ローン以外の借金は大幅に減額出来て住宅ローンは原則全額払うようにしてマイホームを失うことなく払っていけるやり方もあります。(住宅ローン特則付個人再生)
★個人再生の最低返済額について
個人再生した場合どれだけ減額できる?
およその目安として,借金などの総額(住宅ローンを除く)に応じて、借金などの総額が
- 100万円未満の人・・・・・・総額全部
- 100万円以上500万円以下の人・・・・・・100万円
- 500万円を超え1500万円以下の人・・・・・・総額の5分の1
- 1500万円を超え3000万円以下の人・・・・・・300万円
- 3000万円を超え5000万円以下の人・・・・・・総額の10分の1
なお給与所得者等個人再生を利用する方は、上記で減額できた額と自分の可処分所得額(自分の収入の合計額から税金や最低生活費などを差し引いた金額)の2年分の金額とを比較して、多い方の金額を支払う必要があります。
※この可処分所得の2年分は一人暮らしの方は扶養家族のいる方と比べて高くなる傾向がありますので、そのような場合は給与所得者であっても小規模個人再生のほうが
最低返済額が少なく済むことがあります。
詳しいことは専門家である司法書士や弁護士にご相談ください。
★清算価値保証の原則とは?
最低返済額を決める際には、債務者が破産したと想定した場合に債権者が受けることができる予想配当額(清算価値)を試算し、これを下回らない額を弁済する必要があるという原則。債務者に資産が無い場合は特に考慮する必要はありません。
小規模個人再生は①「清算価値」②債務総額の5分の1(最低100万円) で多い方の額を弁済する。
給与所得者個人再生は①「清算価値」②債務総額の5分の1(最低100万円)③「可処分所得」2年分 で最も多い額を弁済する。
以上のように個人再生は任意整理と比べて大きく減額できるので返済も楽になりますが任意整理と違い勤め先や個人からの借り入れがあればそれも手続に入れる必要があります。
また任意整理は基本的に家族などに知られずに手続ができますが、個人再生あるいは破産手続きは裁判所を使う手続きのため内緒にしにくいということがあります。
破産、再生はどちらの手続も官報(国が発行する新聞のようなもの)にお名前が掲載されます。
もっとも官報を見る人は限られているため、そこから知られることはあまりないでしょうが秘密厳守は難しいと言えます。
自己破産
これまで「任意整理」「特定調停」「個人再生」と3つの借金減額方法をご紹介しましたが、いずれも借金の負担は減るが返済はしていく手続きです。
ですが、借金は返したいが、返せる資力もない方もいらっしゃいます。
そのよう方のための究極の借金減額(消滅と言うべきでしょうか)方法が破産手続きです。
破産手続きは債務の全額が免除されるのが原則です。(税金などの公租公課は免除されません。)ただし売却できる資産をお持ちの場合は売却してその売却代金を配当(債権者に債務額に応じて支払う)する必要があります。
売却できる資産がない場合は、借金が免除されるだけです。
※残せる資産に関して詳しいことは司法書士、弁護士等の専門家にご相談してください。
★破産するための要件
誰でも破産できるわけではなくて破産するためには要件があります。
- 継続的に返済ができない状態にあること。
- 債務が非免責債権(公租公課等)だけではないこと(非免責債権のみならば免責されない)
- 免責不許可事由に該当しないこと
免責不許可自由(借金の原因が浪費やギャンブル、資産を隠す一部の債権者に優先的に払う、裁判所にうその報告をする)があると破産を申し立てても免責が認められないことがあります。
まとめ
以上、借金減額方法をご説明しましたが、下記にそれぞれの特徴を簡略化した表をあげておきます。
借金減額を考えている方は司法書士、弁護士などの専門家に相談して、あなたにとってどの手続きがふさわしいかご検討していただければと思います。
みどり法務事務所の「スマサポ」では、債務整理など借金に関するサポートに多数の実績を持っています。相談は何度でも無料対応が可能で、初期費用もゼロ円。秘密厳守なので誰にもバレることなく、フリーダイヤルやメール、LINEにていつでも相談予約が可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
手続き方法 |
任意整理 |
特定調停 |
個人再生 |
破産 |
減額できる金額 |
将来利息のカット |
将来利息のカット |
・借金の最大10分の9 ・最低返済額あり |
借金がなくなる |
主なデメリット |
ブラックリストに載る |
ブラックリストに載る |
・ブラックリストに載る |
・ブラックリストに載る |
費用 |
4万円~11万円 |
3万円~5万円 |
30万円~60万円 |
30万円~60万円 |
期間 |
3ヶ月~6ヶ月 |
3ヶ月~4ヶ月 |
6ヶ月~12ヶ月 |
6ヶ月~12ヶ月 |
※費用に関しては手続を依頼される事務所によって変わります。
※解決までの期間も手続の難易度や貸金業者の対応によって変わります。