連帯保証人とは?家族の依頼でもなってはいけない?保証人との違いやリスクを解説!

2023.02.07 お金を借りる
連帯保証人とは?家族の依頼でもなってはいけない?保証人との違いやリスクを解説!

連帯保証人になると、借金をした本人に代わって全額を肩代わりしなければいけない場合があります。そのため家族や友人からの依頼であっても、連帯保証人になることを安易に引き受けるのは避けたほうがいいでしょう。思いもよらぬ結果を招くリスクがあるので注意が必要です。

この記事では、連帯保証人とは何か、連帯保証人と保証人の違いや連帯保証人になって支払いに困ったときの対処法、勝手に連帯保証人にさせられた場合の解除の可否について解説します。

連帯保証人とは?

そもそも保証人とは、お金を借りている人(主債務者)が返済しなかったときに代わりに支払う人のことです。保証人の中でも連帯保証人は、「連帯」という言葉がついていることから分かるように、主債務者と連帯して同じ返済義務を負うことになるので、保証人と比べて責任の程度が重くなります。

連帯保証人が必要例として挙げられるのは、金融機関から融資を受ける場合や賃貸アパートを借りる場合です。万が一借入れ後に返済ができなくなった場合や家賃を滞納した場合、金融機関や家主は連帯保証人に対して請求できます。連帯保証人が債権者から全額の返済を求められたら、本人に代わってすべて肩代わりしなければいけません。

連帯保証人と保証人の違い

連帯保証人も保証人も借金を肩代わりする立場という点では同じですが、両者には大きな違いがあります。連帯保証人と保証人の違いは「1.催告の抗弁権の有無」「2.検索の抗弁権の有無」「3.分別の利益の有無」の3点です。

1.催告の抗弁権がない

催告の抗弁権とは、お金を借りている本人に代わって保証人が返済するように請求された場合に「まずは主債務者本人に請求してほしい」と主張できる権利のことです。催告とはお金を返すように請求することを指し、抗弁とは反論することを指します。

保証人には催告の抗弁権があるので、返済を求められても「まずは本人に請求してください」と主張できますが、連帯保証人の場合は保証人と違い、催告の抗弁権がありません。本人に請求するように主張することはできず、返済を求められたら応じる必要があります。

仮に金融機関が本人に一切請求せず、最初から連帯保証人に全額の返済を迫ってきた場合でも、連帯保証人は応じなければいけません。

2.検索の抗弁権がない

検索の抗弁権とは、保証人が返済を求められた場合でも、主債務者に弁済する資力があって且つ執行が容易であることを証明できれば、主債務者に対して請求するように主張できる権利です。

保証人には検索の抗弁権があるので、返済を求められた場合でも「返済に充てられる財産が本人にあるのだから、まずは本人の財産や給料を差し押さえて回収してほしい」と主張できますが、連帯保証人の場合は保証人と違い、検索の抗弁権がありません。

本人に請求するように主張することはできないので、仮に主債務者本人に十分な財産があって返済できるにもかかわらず滞納していた場合だとしても、連帯保証人として返済を求められたら応じる必要があります。

3.分別の利益がない

分別の利益とは、主債務者に代わって複数の保証人が返済する際、各保証人は返済額を保証人の人数で均等に割った額を返済すれば良いとされる権利のことです。

保証人の場合は分別の利益があるので、例えば返済総額が1,000万円で保証人が5人いるケースであれば、各保証人は200万円を返済すれば良いことになります。200万円を超す額の返済義務はありません。

しかし、連帯保証人には分別の利益がないので、1人の連帯保証人に対して債権者が1,000万円全額の返済を求めた場合でも応じる必要があります。連帯保証人は保証人と違い、200万円を超す請求を受けても拒否できません。

家族でも要注意!連帯保証人になってはいけない理由となったときのリスク

連帯保証人は、主債務者に代わって返済を求められたら応じなければいけませんが、このときに注意が必要なのが「返済を求められる債務の範囲」です。

例えば、賃貸アパートを借りている人が家賃を滞納して退去させられた場合、未払家賃だけでなく原状回復費用や修繕費なども連帯保証債務に含まれるので、これらの費用も請求される可能性があります。借金の返済が滞って連帯保証人に請求が来る場合は、未返済額だけでなく返済遅延によって生じた遅延損害金も連帯保証債務の対象です。

連帯保証人に請求が来る債務の範囲を家賃や借金の元金だけと勘違いしていると、想像もしていなかったような高額な請求を受ける場合があります。「連帯保証人と保証人の違い」で解説したように、連帯保証人は保証人より責任が格段に重く、債権者から返済を求められたら基本的に拒否できません。

借金の連帯保証人になると自分が全額返済しなければならず、返済できないと資産を差し押さえられたり自己破産をせざるを得なくなる場合があるので、親や子、兄弟姉妹などの家族からの依頼でも、安易に引き受けるのは避けましょう。

連帯保証人になっても無効・解除できる場合とは?

連帯保証契約も契約の一種であり、一方の意思だけで勝手に契約を解除はできません。契約書に署名して連帯保証人になることを了承した以上、一方的に無効や解除を主張しても認められないことになります。

しかし、連帯保証契約が本人の意思によるものでなければ話は別です。勝手に連帯保証人にさせられた場合や詐欺によって連帯保証人になった場合には、無効や解除が認められる可能性があります。

勝手に連帯保証人にさせられた場合

契約は両者の合意によって成立するものなので、無断で勝手に連帯保証人にさせられた場合は連帯保証契約そのものが無効です。連帯保証人になることに同意したりサインしたり、身に覚えのない請求を受けた場合、連帯保証契約が無効であれば返済に応じる必要はありません。

また、身に覚えのない請求を受けた場合には、債権者の求めに応じて返済しないように注意してください。少しでも返済してしまうと連帯保証人の立場を追認したとみなされ、返済義務が生じる恐れがあります。

詐欺によって連帯保証人になった場合

債権者が嘘をついていて詐欺にあたる場合、連帯保証契約を取り消せる可能性があります。取り消しが可能な場合、取り消さない限り契約は有効ですが、取り消すと契約自体がなかったことになるので、返済を求められても応じる義務はありません。

ただし、詐欺があったことの立証は、連帯保証人になった人がする必要があります。一般の方が自分で立証や債権者との交渉、裁判対応を行うのは簡単ではないので、対応が必要な場合は弁護士や司法書士に相談するようにしてください。

連帯保証人から外れることはできる?

契約を一方が勝手に破棄はできませんが、当事者が合意すれば解除できます。連帯保証人から外れたい場合、債権者が同意すれば連帯保証契約を解除できて連帯保証人から外れることは可能です。ただし、相手が応じてくれるケースは多くないので、一度連帯保証人になってしまうと途中で外れることは現実的には難しいと言わざるを得ません。

なお、別の連帯保証人を用意したり、債務に見合うだけの不動産を用意して担保にしたりすれば債権者が応じてくれる可能性はあります。ただし、債権者との交渉には専門的な知識や経験が必要になるので、連帯保証人をやめたい場合は弁護士や司法書士に相談するほうが良いでしょう。

自己破産や個人再生、死亡で連帯保証債務はどうなる?

主債務者が自己破産・個人再生によって返済義務を免れた場合や死亡した場合、連帯保証人の返済義務までなくなるわけではありません。連帯保証人になる際には、どのような場合に返済義務が生じるのか、正しく理解しておく必要があります。

主債務者が自己破産や個人再生をした場合

主債務者が自己破産して返済の義務を免れた場合や個人再生によって借金を減額してもらった場合でも、免除や減額の効果は連帯保証人には及びません。

主債務者が自己破産や個人再生の手続きをすると、債権者から連帯保証人に対して一括返済請求が行われるので、連帯保証人は全額を返済する必要があります。

連帯保証人が死亡して相続が起きた場合

連帯保証人としての地位は相続の対象になるので、亡くなった人が連帯保証人だった場合には、その相続人が連帯保証人になります。連帯保証人の死亡によって返済義務が消滅したり解除されたりするわけではないので、債権者から返済を求められたら連帯保証人である相続人は応じなければいけません。

相続人が複数人いる場合は、債権者と同意できれば各相続人がどれだけの割合で返済義務を負うか話し合って決めることができますが、特に決めていなければ法定相続分に従って連帯保証債務を相続することになります。

例えば、夫が亡くなって相続人が妻と子の2人のケースであれば、債務の負担割合は妻が2分の1、子が2分の1です。

ただし、亡くなった方が連帯保証人だった場合でも、相続放棄をすれば相続せずに済み、残された家族が連帯保証債務を負うことはありません。相続放棄をするとマイナスの遺産だけでなく、現金や不動産などプラスの遺産も相続できなくなりますが、借金の返済義務を負わないためにも、相続すると困る場合には相続放棄を検討してください。

連帯保証人になって支払いに困った場合の対処法

連帯保証人として返済を求められた場合、全額を払えるなら問題ありませんが支払いに困る場合も当然考えられます。

返済が難しい場合でも、債権者からの連絡を無視したり請求に関する通知物を放置したりしてはいけません。以下では、支払いに困った場合の対処法をご紹介します。

債権者と交渉する

返済しないまま放置すると、債権者が法的な手続きを進めて資産を差し押さえられるリスクがあります。まずは債権者と交渉し、一括返済ではなく分割で返済することを認めてもらえないか相談しましょう。

交渉に応じてくれるかどうかや、どれくらい譲歩してくれるのかは金融機関によって異なりますが、実際に交渉に応じてくれるケースも少なからずあります。債権者としては、連帯保証人に自己破産をされて回収額が減るより、時間をかけてでも分割払いで回収したほうが良いと判断して交渉に応じてくれる場合があるので、返済が難しい場合には債権者に連絡して状況を伝えるようにしてください。

債務整理を検討する

どうしても返済できない場合は、債務整理を検討することになります。債務整理とは、借金を減額・免除する手続きです。債務整理をする場合は、債権者と個別に交渉したり裁判所で手続きをしたりして借金を減額・免除してもらいます。

債務整理にはいくつかの種類があり、主なものは任意整理個人再生自己破産の3つです。任意整理では、債権者と個別に交渉して利息等をカットして負担を軽くしてもらいます。個人再生の場合は、裁判所に提出して認可を受けた再生計画に基づいて返済することになり、5分の1や10分の1など借金を本来の額より減額してもらった上で、返済を進めることになります。

自己破産はどうしても返済できない場合の最終的な手段で、破産申立書を裁判所に提出して認められれば借金の返済が免除されますが、財産は一部を除いて処分しなければいけません。職業制限によって、自己破産後の生活に影響が出る場合があります。

債務整理をする際には専門的な知識が必要になり、一般の方がご自身で債権者との交渉や裁判所での手続きをすることは簡単ではありません。借金の返済でお困りの方は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することを検討してみてください。

まとめ

連帯保証人は保証人と違い、仮に債権者が主債務者に請求せず最初から連帯保証人に返済を請求してきた場合でも応じなければいけません。連帯保証人になってしまうと借金を全額肩代わりしなければならず、返済できないと資産を差し押さえられたり自己破産を選択せざるを得なくなったりする場合があるので注意が必要です。親や子、兄弟姉妹など、家族からの依頼であっても安易に引き受けるのは避けましょう。

連帯保証人になって支払いに困った場合には、債権者との交渉や債務整理の対応が発生しますが、借金の返済に関する対応では専門的な知識や経験が必要になります。返済ができないや勝手に連帯保証人にさせられてお困りの方は「スマサポ」にご相談ください。

この記事を監修したのは、

admin

寺島 能史

東京司法書士会
会員番号: 第6475号
認定番号: 第901173号