住宅資金特別条項とは?利用要件や内容、個人再生をしても家を手元に残したいときの方法を解説

2024.02.28 個人再生
住宅資金特別条項とは?利用要件や内容、個人再生をしても家を手元に残したいときの方法を解説

個人再生では、自己破産とは異なり住宅ローンが残っていても自宅を残せる場合があります。この制度を住宅資金特別条項といい、本記事では、これについて簡単に解説してきます。

住宅資金特別条項とは?

住宅ローンを個人再生の対象から外せる制度のこと

住宅資金特別条項とは、個人再生で住宅ローンを対象外とし、自宅を残したまま手続きができる制度です。

本来、個人再生では住宅ローンを含むすべての債務を対象とする必要がありますが、この制度を利用が認められれば、住宅ローン以外の借金を減額の対象として、住宅ローンは従来通り返済を続けていくことになります。

住宅資金特別条項を利用するための要件

住宅資金特別条項を利用するための要件は次の通りです。

①抵当権が設定されている住宅資金貸付債権(住宅ローン)であること

住宅ローンの目的が住宅の購入・建設・改良であり、そのためのローンで抵当権を設定している必要があります。

また、戸建ての場合、住宅ローンの目的には土地や敷地権の取得も含みます。

②個人である債務者が所有している建物の免責の2分の1を居住として使っていること

個人である債務者が居住のために所有している「住居」のみが対象となり、所有には共同所有も含みます。

投資用の不動産、事業目的のビルのような居住の実態がない場合は対象となりません。

③住宅ローン以外の担保を設定していないこと

建物に、住宅ローン以外の借入について担保権を設定していないことが必要です。住宅ローン以外に、住宅を担保として借入をしている場合は対象外となります。

④滞納により保証会社が代位弁済をした場合、6カ月以内に個人再生を申し立てる

住宅ローンを滞納してその状態が解消されないと、保証会社が代わりに住宅ローンを返済し、住宅は競売にかけられることになります。

しかし、保証会社が代位弁済をしてから6カ月以内に個人再生を申し立てて住宅資金特別条項を利用すれば、代位弁済がなかったものとして扱われ、住宅ローンの返済を続けていくことができます。

住宅資金特別条項の内容

住宅資金特別条項を利用した場合、住宅ローンについては減額されず返済していくことになりますが、従来通り返済することはもちろん、期間を延長なども可能です。

<住宅資金特別条項を利用した場合の住宅ローンの返済方法>

①従来通りに返済していく方法

住宅ローンを滞納などしていなければ、従来通り、ローンを設定した当時の条件で返済していきます。基本的にはこの方法になります。

②期限の利益猶予型

期限の利益とは、住宅ローンの分割返済が認められ、一括請求をされないという利益のことです。

住宅ローンの滞納によりこの期限の利益を喪失すると、銀行側は残金を一括請求することができますが、この「期限の利益猶予型」では、期限の利益を喪失していなかったものと扱い、再び分割弁済が可能となります。

③リスケジュール型

期限の利益の猶予だけでは住宅ローンの完済が難しい場合に、返済期間を延長してもらう方法です。

ただし、延長期間は本来の最終弁済から10年以内、かつ最終の支払い時点で満70歳を超えないことが必要です。

④元本猶予期間併用型

リスケジュール型でも住宅ローンの完済が困難な場合、3年~5年の範囲で元本の支払いを猶予してもらい、利息のみを支払うという方法です。

リスケジュール型を併用するので、猶予期間後の返済額はその分多くなってしまいます。

⑤同意型

住宅ローンの債権者の同意があれば、上記の①~④以外に自由に返済方法を決めることができます。

住宅資金特別条項でできること

改めて、住宅資金特別条項を利用した場合にできることをまとめます。

住宅ローンのある持ち家を手元に残す

住宅ローンが残っていても自宅を手元に残せます。

本来であれば住宅ローンを含むすべての債務を対象とすることになりますが、住宅資金特別条項を利用すれば住宅ローンを対象から外せるので、返済を続けていく限り自宅は競売にかけられません。

住宅ローンの返済スケジュールの変更

住宅ローンを滞納していた場合、一定の制限はありますが返済期限を延長することができます。

持ち家と土地の差し押さえや競売を避けられる

住宅ローンの滞納により自宅・土地を差し押さえられたとしても、個人再生を申し立てればその手続きが完了するまでは、差し押さえを停止させることができます。

住宅資金特別条項が利用できないときの対処法

住宅資金特別条項を利用できなくても、自宅を残せる場合があります。

住宅ローン以外に住宅を担保として借入をしている場合、住宅資金特別条項の要件から外れますが、住宅ローン以外の債権者と協議し、担保住宅の評価額相当の金額を分割払いする合意ができれば、住宅ローンに担保権を実行されて競売にかけられることはありません。

これを「別除権協定」といいます。

ただし、この別除権協定を進めるための債権者との交渉は困難なため、希望する場合は弁護士・司法書士に相談をしてください。

まとめ

住宅資金特別条項を利用すれば、個人再生の手続きから住宅ローンを除外して自宅を残すことができます。利用には、抵当権が設定されている、住宅ローン以外の担保が設定されていない等の要件が必要です。

住宅資金特別条項をの要件満たさなくても別除権協定が認められれば自宅を残せますが、債権者との交渉は困難なため、手続きに不安があれば弁護士・司法書士に相談をしましょう。

この記事を監修したのは、

admin

寺島 能史

東京司法書士会
会員番号: 第6475号
認定番号: 第901173号