借金に時効はある?返さなくてもよい条件や注意点を解説
借金も時効を迎えると、返済しなくてもよくなることはあるのでしょうか。
そもそも借金に時効はあるのか、何年経てば時効が成立するのか、その条件や時効を成立させる際の注意点などについても気になるところです。
この記事では、借金の時効に関する基礎知識についてわかりやすく解説しています。消滅時効や時効の援用など、借金における時効が成立するための条件や注意点についても紹介していますので、借金の時効について知りたい際の参考としてください。
目次
借金の時効とは
借金の時効とはどのような状態をさすのか、その概要について解説します。
一定期間経過後に権利が消滅する「消滅時効」
借金における時効とは、一定期間が経過したのちに「貸したお金を返してもらう権利」が消滅することをさします。「消滅時効」と呼ばれるもので、借金や損害賠償など、一定期間行使されなかった権利などに使うことのできる、民法でさだめられた制度の一つです。なお、時効には「消滅時効」と「取得時効」があり、取得時効は所有する意思を持って一定期間所有したものについて所有権が発生する制度をさします。
時効がある理由
時効という制度がさだめられた理由としては
- 権利があるのに行使しない状態を長期間保護しない
- 一定の状態が長期間続いているという事実を尊重する
- 長期間が経過して権利の立証が困難になったケースからの救済
といった点が挙げられます。
権利を行使できる期間に一定の期限をさだめることで社会秩序を保ち、経年と共に権利の立証が困難になった事案を救済したり、権利を行使できる立場にあるからといって何も対策を講じない場合は権利行使を認めないためである、ということもできるでしょう。
時効の援用とは
時効の援用とは、時効が成立する場合に「これは時効である」と主張することで、時効の効果を確定的に発生させる意思表示です。
借金の場合は、時効成立後に債権者から返済の請求を受けた際「この借金は時効を迎えているため、返済の義務はありません」と主張することで、借金を返済しなくてもよくなります。
借金の時効が成立したり、時効が援用できたりするのは、どのようなケースなのでしょうか。
借金の時効が成立する条件は?
借金の時効が成立する条件について解説します。
消滅時効が成立する条件
借金において消滅時効の援用をする場合、返済期日または最終の返済日から5年または10年が経過していることが基本の条件となります。
5年となるか10年となるかは「いつの借金であるか」「どこから借金したか」によって起算点が異なり、それぞれ以下のようになります。
【2020年3月末以前の借金】
消費者金融・クレジットカード・銀行・携帯電話:5年
信用金庫、住宅ローン、奨学金、個人間の借金など:10年
【2020年4月以降の借金】
権利を行使できると知った日(主観的起算点)から5年
権利を行使できる日(客観的起算点)から10年
「権利を行使できる日」とは、返済期日を迎えて借金の請求ができるようになった日のことをさします。基本的には上記の期間が経過すると消滅時効の主張が可能ですが「時効の更新」や「完成猶予」となる場合には、時効がリセットされます。
時効の更新とは
時効の更新とは、権利を行使できる日からカウントの始まっていた時効が裁判や仮差し押さえなどでリセットされることです。
例えば、借金の滞納によって債権者から裁判を起こされ判決が出た場合、時効はその日からカウントされ直すこととなるのです。時効が更新されるタイミングは裁判だけでなく、催告書の送付や協議の合意、天災などによっても更新されます。
催告書が送付された場合、時効期間は6か月「延長」されます。 この期間内に裁判上の請求などをする必要があります。
具体的には『催告から6か月後まで』の間に提訴や債務者の承認などの(通常の)時効中断の手続きが可能になります。 逆に『催告から6か月後まで』に、提訴や承認などがなされない場合は、『催告の効力が失われる』ことになります(民法153条)。
多くの金融機関では、債権が時効を迎えることのないように、時効が更新されるように何らかの行動を取っていることが多いでしょう。
時効の完成猶予とは
時効の完成猶予とは、時効を迎える直前に「権利を行使できる」と気づいて裁判を起こした場合、裁判中に時効を迎えても一定期間は時効の完成が猶予されることです。
時効の完成が猶予されるケースとしては、時効の更新が生じるのと同様に「裁判」や「仮差し押さえ」「天災」などが挙げられます。時効の完成が猶予される期間は以下のようになります。
催告、仮差押え:催告後(仮差押えは手続き終了後)6ヶ月間
協議の合意を得た場合:合意した日から1年、または1年未満の設定した期日
協議が拒絶され続行不能となった場合:拒絶された日から6ヶ月間
借金の消滅時効によるメリット・デメリット
借金が時効を迎えることによるメリットとデメリットについて解説します。
借金の時効によるメリット
借金が時効を迎えることによるもっとも大きなメリットは、借金がゼロになることでしょう。ただし、時効を迎えたからといって自動的に借金がなくなるわけではありません。書面によって債権者へ通知することで、時効の援用を行うことができるようになります。
また、時効の援用によって借金がゼロになった場合、完済したものとみなされてブラックリストから記録を消すことができる可能性があります。
時効の援用は借金の総額や現在の収入状況なども関係ないため、手間も時間もかからずに借金をゼロにすることが可能です。もし時効の援用ができない場合でも、専門家へ手続きを依頼すれば他の債務整理も検討できます。
借金の時効によるデメリット
借金の時効を迎えることによるデメリットは、時効の援用が失敗した場合に借金をゼロにできないばかりか、遅延損害金などを請求されるリスクがある点です。
時効の援用は自力で行うこともできますが、消費者金融など借金のプロを相手に時効を主張しても難航する可能性が高いのです。そもそも時効の援用が成立することのないように、催告などの手続きをしているケースが多く、時効と思い込んで交渉したら借金に加え、損害遅延金も上乗せして一括請求されてしまう場合もあります。
消費者金融やカード会社からの借金の場合、時効の援用ができるケースはほとんどないのが一般的です。もし借金について時効の援用ができるかの判断に迷った場合は、一度専門家へ相談してみるとよいでしょう。
借金で悩んだら専門家へ相談を
「借金の返済が苦しい」「借金を減らして生活を建て直したい」とお悩みの場合は、早い段階で債務整理に強い専門家へ相談するのがおすすめです。自分1人で悩んでいても良い結果になることは少なく、放置すれば差し押さえなどのリスクも高まってしまいます。
「スマサポ」では、時効の援用に関するアドバイスはもちろん、時効の援用ができない場合でも、自己破産や個人再生、任意整理など、他の債務整理を検討するお手伝いも行っています。1人ひとりのお悩みに応じて丁寧にお話を伺い、問題解決までのサポートが可能です。全国どこでもお問合せ可能ですので、借金に関するお悩みはお気軽にご連絡ください。
まとめ
借金には、一定期間返済がなかった場合に権利が消滅する「消滅時効」が定められています。基本的には債権者が権利を行使できると知った日から5年、または最終の返済日から10年となりますが、時効のカウント途中で裁判や催告、協議などが行なわれた場合には、時効のカウントがリセットされたり、時効の完成が猶予されたりするため、時効を迎えることは少ないのが一般的です。
時効となった場合も自動的に借金がゼロになるわけではなく、消滅時効の援用が必要となります。過去の借金について不明な点がある場合や、借金返済で悩んでいる場合は、一度専門家へ相談してみるとよいでしょう。