消滅時効とは?延長される場合はある?時効となった場合の対応についても解説
借金の返済をしないでいると、消滅時効によって返済しなくてもよくなるケースはあるのでしょうか。そもそも消滅時効とはどのような制度なのか、成立するのにどのくらいの期間がかかるのか、消滅時効を迎えた場合の対処法などについて気になる方も多いことでしょう。
この記事では、消滅時効の概要や種類、成立する期間などについて解説しています。消滅時効を迎えた場合にどうすればよいかもわかるようになっていますので、借金返済や時効に関する基礎知識としてもお役立てください。
目次
消滅時効とは
消滅時効の概要や種類について解説します。
一定期間使われなかった権利を消滅させる制度
消滅時効とは、ある権利が一定の間使われなかった場合に、権利の行使を消滅させるよう民法でさだめられた制度です。借金の場合、お金を貸した側(債権者)には決まった期日までに返済を要求する権利がありますが、一定期間借金の回収を行わなかった場合に、その権利が消滅することを消滅時効と呼んでいます。
消滅時効の種類
消滅時効は権利によって種類が異なり、以下のようなケースに消滅時効がさだめられています。
一般債権:一般的な債権を回収する権利です。借金やローンは個々に含まれます。
不法行為の損害賠償:詐欺や横領など、不法行為による損害賠償を請求する権利です。
身体や生命侵害の賠償:傷害や暴行などによって身体や生命を侵害されたことに対する損害賠償を請求する権利です。
消滅時効は種類によって、それぞれに成立する期間が異なります。
消滅時効が成立する期間は?
消滅時効が成立する期間については、2017年の法改正により以下のようにさだめられています。
一般債権の消滅時効
一般債権の消滅時効は「主観的起算点から5年」または「客観的起算点から10年」のうち、どちらか短い方とされています。主観的起算点とは「権利を有している者が権利を行使できると知った時点」となり、客観的起算点とは「権利を行使できる時点」となります。例えば、AがBにお金を貸した場合、あらかじめ取り決めておいた返済期日が「客観的起算点」となります。もし返済期日にBが返済をせず、Aが客観的起算点に気づかないまま数年経過した後に権利を行使できると気づいた場合には、その時点から5年権利を行使しなければ消滅時効となります。
消費者金融などの業者が債権者である場合、返済期日が客観的起算点であることは当然理解していると考えられるため、客観的起算点であると同時に主観的起算点でもあると考えられます。そのため、消費者金融や金融機関からの借金やローンに関しては、返済期日から5年が経過するまで権利行使されなかった場合に消滅時効となります。
不法行為による損害賠償の消滅時効
不法行為による損害賠償の消滅時効は「主観的起算点から3年」または「客観的起算点から20年」のうち、どちらか短い方とされています。不法行為における主観的起算点とは「不法行為が行われた時点」となり、客観的起算点とは「被害を受けた人が加害者と損害に気づいた時点」となります。
生命や身体の侵害による損害賠償の消滅時効
生命や身体の侵害による損害賠償の消滅時効は「主観的起算点から5年」または「客観的起算点から20年」のうち、どちらか短い方となります。
借金の消滅時効が延長されるケース
上記の消滅時効が成立する期間は、あくまでも原則としての期間となり、以下のようなケースでは延長されることとなります。
時効の更新:時効のカウントがリセットされ、始めの起点に戻ること
時効の完成猶予:時効が完成するまで、一定期間の猶予が与えられること
時効の更新は、裁判で催告を行ったり、裁判で確定判決が出たりした際に行われます。時効の完成猶予は、裁判中に時効が完成する場合、確定判決が出るまで完成が猶予されることとなります。時効の完成猶予は、債権者と債務者両方が協議によって合意を得た場合に1年、合意により1年より短い期間を定めた時はその期間、再度合意を得ることで、最長5年まで猶予することが可能です。
金融機関などの債権者は、消滅時効を迎えることがないように、借金の消滅時効が延長されるよう裁判の申し立てをするのが一般的です。また、債権回収業者などへ債権を譲渡した場合も時効が更新されます。金融機関からの督促状が、見知らぬ債権回収業者の名前で届くようになることがあるのはこのためです。
消費者金融や金融機関、カード会社といった企業はこうした知識を当然持っているため、実際に借金で消滅時効を迎えるケースはほとんどないと考えた方がよいでしょう。
借金の消滅時効を迎えた場合の対応
借金の消滅時効を迎えた場合の対応について解説します。
時効援用の手続きを行う
消滅時効は、時効を迎えたからといって自動的に権利が消滅するわけではありません。消滅時効を迎えた後、債権者から請求があった際に「消滅時効の援用」を主張することで、はじめて時効の効果が生じることとなります。
消滅時効成立までの流れ
時効成立までの大まかな流れは以下のようになります。
- 信用情報の開示請求を行い、消滅時効を迎えているかチェックする
- 時効援用通知書を作成し、内容証明付郵便で債権者へ送付する
信用情報情報の開示請求は、信用情報機関へ行います。信用情報機関には「CIC」「JICC」「KSC」の3つがあり、いずれもオンラインや郵送で情報の開示請求を行うことが可能です。信用情報には、過去の借金履歴や返済状況などが更新され、一定期間掲載されているため、信用情報を確認することで消滅時効を迎えているかを知ることができます。
時効援用通知書は、後で「届いていない」といわれないために、内容証明付郵便で送付するのが一般的です。
時効援用手続きの際の注意点
時効援用の手続きを取ると、通知書を送付して消滅時効が生じた債権者からは、将来的に新たな借り入れなどが難しくなるため注意が必要です。
また、法改正前の借金の場合、改正前の旧法による時効のカウント扱いとなります。令和2年3月31日以前の借金やローンの場合、時効のカウントが長くなってしまうため注意しましょう。
消滅時効や借金に関する疑問は専門家へ相談しよう
消滅時効の援用や時効を迎えた場合の交渉などは、自身で行うよりも専門家へ依頼した方が確実です。消滅時効を迎えたと思い込んで時効の援用を主張したらまだ時効を迎えておらずに借金返済を消滅できなかった、という事態は避けたいところでしょう。特に金融機関では消滅時効を迎えないように、また時効の更新や完成猶予が生じるように様々な対策を取るのが一般的です。過去の借金や消滅時効に関する疑問がある場合は、一度債務整理や過払い金請求などのサポートに強い専門家へ相談してみるとよいでしょう。
まとめ
消滅時効とは、ある権利を持っている債権者がその権利を行使せずに一定期間経過すると、その権利が消滅して行使できなくなる制度のことです。消滅時効が成立する期間は法改正によって短くなっているものの、過去の借金については旧法でのカウント扱いとなるケースもあります。裁判や催告などで時効がリセットされる、あるいは時効を迎えるまで猶予期間が付与されるといったケースもあり、債権者は消滅時効を迎えないように様々な対策を取るため、時効援用できるケースはあまり多くはありません。過去の借金に過払い金が発生している可能性もあるため、気になる点がある場合は一度専門家へ相談してみるようにしましょう。