国民年金の滞納で差し押さえの可能性はある?基準や流れを解説!

2023.08.03 お金を借りる
国民年金の滞納で差し押さえの可能性はある?基準や流れを解説!

国民年金の滞納で、財産を差し押さえられる可能性はあるのでしょうか。

収入が減ったり、急な出費が増えた場合、国民年金の納付負担が大きくて滞納してしまった経験を持つ人もいらっしゃるでしょう。

この記事では、国民年金を滞納した場合に起こるリスク、差し押さえにあう可能性、滞納し続けた場合の流れなどについて解説しています。

年金以外の支払いや返済がきつい場合の対処法についてもわかるようになっていますので、返済や滞納についてお悩みの方の参考としても役立つ内容となっています。

年金を滞納した場合のリスクとは?

はじめに、年金を滞納した場合のリスクについて解説します。国民年金を滞納した場合、以下のようなリスクがあることを知っておきましょう。

将来の年金額が減る

毎月の国民年金保険料額は、毎年細かく見直しが行われており、令和5年度の保険料は月額16,520円となっています。

毎月の保険料を20才~60才まで納付した場合、65才より満額の国民年金を受給することができます。

年金を滞納した場合の期間は「未納期間」となります。未納期間は年金納付期間に合算されないため、未納期間に応じて将来的に受け取る年金額が少なくなってしまいます。

年金がもらえなくなる

年金を滞納すると、将来受け取る年金の額が少なくなるだけでなく、未納期間によっては年金そのものがもらえなくなる可能性もあります。

国民年金を受給できる要件は、納付済み期間と免除期間などを合算した期間が10年以上あることとされています。

そのため、未納期間が長く合算期間が10年に満たない場合、年金がもらえなかったり、障害年金が受け取れなかったりする可能性があるのです。

延滞金や差し押さえのリスクも

国民年金の納付書には、納付期限が記載されています。

期限を過ぎても納付せずに滞納した場合、納付期限の翌日から年金を納付した日までの間に延滞金が発生してしまいます。

また、一定の収入があるにもかかわらず滞納を続けた場合、預貯金などが差し押さえにあう可能性もあるのです。

年金は差し押さえの対象にならない」という話を耳にしたことがある方もいるかもしれませんが、この場合の年金は受給する年金のことを指しています。年金の受給権は法律で差し押さえが禁止されていますが、国民年金保険料の滞納は差し押さえの対象となるのです。

そのため、納付しなければならない国民年金保険料を納付しなかった場合には「強制徴収」となり、財産を差し押さえられて年金を徴収されてしまうリスクがあります。

年金の滞納で差し押さえにあうまでの流れ

年金の滞納で差し押さえにあうまでの流れ

年金を滞納すると財産が差し押さえられるリスクがあることがわかったところで、実際にどのような流れで差し押さえられることとなるのかを解説します。

差し押さえまでのステップは6つ

国民年金の滞納から差し押さえに至るまでは、以下の6つのステップを辿ります。

 

・納付書が届く

国民年金保険料の納付書が自宅に届きます。

納付書には納付期限が記載してあり、通常はこの期限までに保険料を納付することとなります。

 

・納付督励

期限を過ぎても保険料を納付しないでいると、日本年金機構から国民年金が未納であること、すみやかに納付するようにとの催告状が届き始めます。

この期間は納付督励(のうふとくれい)と呼ばれており、未納になっている年金を自主的に納付するようすすめる期間となっています。

納付督励中に年金滞納を続けていると、催告状が複数回届き、電話連絡や自宅訪問などが行われることもあります。催告状の封筒の色は青から黄色、赤色の順に警告度が高まり、赤色のものは「特別催告状」と呼ばれます。

 

・最終催告状

納付督励中、催告状は青、黄、赤色の合計3回届きます。赤色の特別催告状が届いても年金を支払わないでいると、「最終催告状」と呼ばれる封書が届きます。

納付督励中に送られる催告状は「支払いを忘れていませんか、期限までに納付をしてください」と自主的な納付をすすめるようになっていますが、最終催告状では期限までに納付されない場合、自動的に財産を差し押さえる手続きに入っていきます。

 

・督促状

督促状は、最終催告状を無視していると届きます。

督促状が届くと差し押さえまで待ったなしの「強制徴収」へと進んでいきます。延滞料も発生し始め、連帯納付義務のある家族のもとへも、督促状が届きます。

 

・差押予告通知書

督促状に対して何の行動も起こさないでいると、「差押予告通知書」と呼ばれる書面が届きます。強制徴収の段階に入っているため、日本年金機構は滞納者の財産について調査を行い、預貯金や所有している不動産、自動車など差し押さえ対象となる財産の調査が終わると差押予告通知書が送られてきます。

 

・差し押さえ

差押予告通知書が届いた後は、何の通知も連絡もなく突然財産が差し押さえられてしまいます。預貯金や給与振込みのある銀行口座から強制的に引き落としが行われるだけでなく、自動車や不動産が使用できない事態になる可能性もあるのです。

差し押さえは納付額を満たすまで続く

一度の差し押さえが納付額に満たない場合、延滞金を含めた滞納額に達するまで差し押さえは続けられます。財産が差し押さえにあう「強制徴収」の対象となる要件は、2023年現在以下のようになっています。

年金滞納分の強制徴収対象者:控除後所得が300万円以上、未納月数7ヶ月以上

上記の要件に該当し、なおかつ再三の催告状や督促状を無視して滞納を続けた場合、1ヶ月の生活費を除いた給与や不動産、有価証券、自動車といったあらゆる財産が差し押さえの対象となってしまいます。

本人の家族の財産が差し押さえにあうことも

年金の滞納で財産が差し押さえられるのは、滞納した本人だけではありません。年金を滞納した人の家族の財産も、差し押さえられるケースがあります。

国民年金は、国民の義務として20才~60才までの40年間納付が義務付けられています。本人が納付できない場合、「世帯主」と「配偶者」は連帯納付義務者として年金納付の義務があることも、法律で定められているのです。

そのため、本人の預貯金や不動産などが差し押さえられるだけでなく、世帯主や配偶者の財産も差し押さえにあう場合があるため注意が必要です。

年金滞納に時効はある?

年金の滞納には法律で時効が定められており、その期間は2年とされています。

つまり、年金を滞納して2年が経過すると、日本年金機構が年金を徴収する権利がなくなるため、滞納している年金を納付しなくてもよくなります。

年金を滞納しても、時効が来れば納付する必要がなくなるのだから無視してもよいのでは」と考えたくなりますが、時効を待つのは現実的ではなく、おすすめできません。

滞納の時効は2年ですが、2年以内に督促状が出されると、その時点で時効の期間が更新されてしまうからです(消滅時効)。

数十年前であれば、国民年金の滞納や未納期間があっても督促状が出されることなく2年以上が経過して時効となっているケースも少なくありませんでしたが、現在国では積極的に国民年金の徴収を進めています。

そのため、年金を滞納しても2年以内には督促状が送られてきて、時効がリセットされてしまう可能性が高いと考えた方がよいでしょう。

年金滞納で差し押さえられないための対処法

年金の滞納で、差し押さえにあわないための対処法について解説します。

毎月しっかり納付する

前章でも解説した通り、国民年金の納付は法律で定められた国民の義務となっています。

年金滞納で差し押さえられない対処法は、あたり前ですが滞納しないことです。

国民年金保険料を納付することで将来年金受給が可能となり、受け取れる年金額も増やすことができます。また、納めた年金は所得税控除の対象となるため、節税にも繋がります。

年金や保険料、税金などは納付を後回しにしないようにしましょう。

催告状を無視しない

経済的な理由などで年金の納付が難しかったとしても、その後に届く催告状を無視しないことも大切です。

催告状を無視しているとどんどん警告度が高まり、気づいたら差し押さえられていたというケースも少なくありません。

特に赤色の特別催告状を無視すると、その後の差し押さえは避けられないと思っておきましょう。

滞納しても催告状を無視しないこと、年金を支払う意思があることを表明することが重要となります。経済状況や一定の要件を満たしている場合には、次に解説する減免措置などが取れる場合があるからです。

減免、支払猶予の手続きを取る

退職や入院、家族の介護といった理由などで収入が安定せず、年金の支払いが難しい状況にある場合、日本年金機構へ申し出ることで、国民年金保険料の減免措置が取れる場合があります。

年金の納付が難しい場合に取れる措置には、以下のようなものがあります。

 

・保険料減免措置

前年度の所得が一定を下回っている場合、日本年金機構へ申請すれば保険料の減免措置を受けることが可能です。

減免措置には、保険料全額が免除される「全額免除」と一部が免除される「一部免除」があり、一部免除では保険料全額のうち4分の3、半額、4分の1のいずれかの額が免除されます。

減免措置を受けた期間は未納や滞納とはみなされず、受給資格期間としてもカウントされるうえ、年金を全額納付した場合の半額から8分の7までにあたる年金を将来受け取ることが可能です。

減免措置を受けた場合に受け取れる年金額は

 

  • 全額免除:全額納付した場合の半額
  • 4分の3免除:全額納付した場合の8分の5
  • 半額免除:全額納付した場合の8分の6
  • 4分の1免除:全額納付した場合の8分の7

 

となります。

保険料の減免措置は、免除を受けようとする本人または世帯主、配偶者の前年所得が一定以下の場合に、本人が申請することで減免を受けることが可能です。

過去2年間まで遡って申請することもできます。

 

・納付猶予制度

20才~50才未満で本人または配偶者の所得が一定を下回っている場合、本人が申請して承認されれば年金の納付猶予を受けることも可能です。

納付猶予を受けた場合、後から追納しないと年金受給額が増えることはありませんが、滞納や未納とはみなされず、受給資格期間としてカウントもしてもらえます。

国民年金保険料の減免措置をしなかった場合、将来的に受け取る年金に影響するだけでなく、障害年金や遺族年金が支給されない可能性もあります。

前年度の所得が減免や納付猶予に該当しない場合でも、相談することで分割払いに応じてもらえる可能性もあります。

このほかにも、失業や廃業時特例、産前産後の納付免除、学生特例による納付免除といった制度もあります。減免や納付猶予を受けた期間中の保険料は、後日追納すれば年金を全額受給することも可能です。追納できる期間は、減免や納付猶予が承認された月前の10年以内となっています。

申請方法や申請できる期間、申請条件などについて詳しく知りたい際は、所轄の役所または日本年金機構へ問い合わせてみるとよいでしょう。

借金がある場合は債務整理を検討する

借金を抱えていて年金の納付が難しい」「借金返済も滞納しているのに、年金を支払う余裕がない」といった場合、債務整理を検討することで支払いを減免できる場合があります。

債務整理とは、滞納や返済不能な債務がある場合に借金を減免してもらう制度のことです。

ただし、国民年金保険料や各種税金などを債務整理で減免することはできません。一方、消費者金融やカード会社から借金をしている場合には、債務整理によって返済方法の見直しや借金の減免を受けられる場合があるのです。

債務整理には、主に以下のような種類があります。

 

・自己破産

裁判所を通して、現在借金している全額の支払い義務を免除してもらう手続きです。自己破産の手続きをすると、いわゆるブラックリストに載った状態となるほか、不動産や預貯金などの財産がある場合は、生活に必要な最低限を除いて処分されるなどのデメリットがあります。

 

・個人再生

裁判所を通して借金を大幅に減額し、返済期間や返済方法も見直してもらう手続きです。減額や返済回数の延長などはできても支払い義務は残るため、借金を返済する意思があることが前提となる点が自己破産とは異なります。

ブラックリスト入りするリスクはありますが、持ち家を手放さずに住み続けられるほか、一部財産保有を認めてもらうことが可能です。

 

・任意整理

裁判所を通さず、債権者と交渉することで将来的に支払う利息を減額し、35年かけて借金を完済する手続きです。

基本的には利息の減額と返済額や返済期間の延長がメインとなるため、ほかの債務整理に比べると減免の効果は小さいですが、財産を処分せず保有できる点や保証人への影響を避けられる点、などがメリットとして挙げられます。

債務整理で年金以外の借金を減額したり、月々の返済額を減らしたりすることで、年金が納付しやすくなるでしょう。

債務整理は専門家へ手続きを依頼するのが一般的です。専門家へ依頼することで督促の連絡などから解放されるうえ、手続きや交渉もスピーディに進めることができるでしょう。

借金の滞納や支払いに困ったら専門家へ相談を

年金の納付が難しい」「滞納を続けていて、どこへ相談したらいいかわからない」といった場合は1人で悩まず、借金返済などの取扱い実績が豊富な専門家へ早めに相談するようにしましょう。

みどり法務事務所では、借金問題の解決や債務整理の豊富なサポート実績を持っています。どんな相談も丁寧にお話を伺い、最適な解決方法について納得いくまでご提案させていただきます。

初回相談は無料で、勤務先や家族にもバレずにご相談いただくことが可能です。オンライン相談などにも対応していますので、お電話やLINE、問い合わせフォームなどからお気軽にお問い合わせください。

まとめ

国民年金を滞納すると催告状などが複数回届き、無視を続ければ最終的に強制徴収となって財産を差し押さえられる可能性もあります。年金の納付は国民の義務となっており、未納や滞納は厳しく徴収されるだけでなく、将来的に年金を受け取れない可能性も高まるのです。

年金の支払いが難しいと感じた時点で、減免や納付猶予措置を申請することで滞納扱いにならず、受給資格期間にカウントしてもらえます。他の借金返済も苦しい場合は、債務整理などを検討することも可能です。

借金返済が原因で発生してしまった年金の滞納についてお悩みや不安がある場合は「スマサポ」をご活用ください。専門家のサポートを受けることで、最適な解決方法が見つけられるでしょう。

この記事を監修したのは、

admin

寺島 能史

東京司法書士会
会員番号: 第6475号
認定番号: 第901173号