連帯保証人に勝手にさせられたときの対処法!サインした親や友人は罪になる?

2023.02.16 お金を借りる
連帯保証人に勝手にさせられたときの対処法!サインした親や友人は罪になる?

連帯保証人に勝手にさせられてしまい、身に覚えのない内容が書かれた請求書が届いた場合、対応の仕方を誤ると借金の返済義務を負ってしまうことがあります。

この記事では、連帯保証人に勝手にさせられたときの返済義務の有無や対処法、勝手にサインした人が問われる罪の種類や量刑について解説します。

身に覚えのない請求が来たらやるべきこと

借金を返済するように請求が来た場合、請求期限を過ぎて遅延利息が発生したり資産を差し押さえられたりしないよう、すぐに対応する必要があります。身に覚えのない請求であっても、無視はせずに迅速かつ冷静に対処することが大切です。

勝手に連帯保証人にさせられていた場合、弁護士や司法書士など専門家に相談して対応することをおすすめしますが、一般的には以下の流れで対処することになります。

1.「内容を確認せず無視する」はNG!まずは請求の中身を確認する

まずは、返済を求める通知の内容をよく確認し、債権者に心当たりがあるか、請求内容が正当なものかを確認する必要があります。

項目としては、債権者の氏名や住所、連帯保証契約書の名称や日付を確認してください。

また、身に覚えのない請求だとしても、請求が正当なものと認められて支払義務が生じる可能性はゼロではないので、請求金額や支払期限も確認しましょう。期限が迫っている場合は早急に対応する必要があるので、弁護士や司法書士に相談するようにしてください。

2.勝手に連帯保証人にされたことを債権者に内容証明郵便で伝える

勝手に連帯保証人にさせられていて、自分には支払義務がない場合、その旨を債権者に対して伝えることになります。後々に裁判になったときの証拠とするため、債権者への通知は内容証明郵便で行うことが一般的です。

債権者への通知には、勝手に連帯保証人にされて身に覚えがないことや、連帯保証契約は無効であり支払義務はないことなどを記載します。

3.裁判で返済義務がないことを主張する

債権者との交渉がまとまらず相手が支払いを求めて裁判を起こした場合や、自分から債務不存在確認訴訟を起こした場合、返済義務がないことを裁判で主張することになります。

債権者の主張に対して反論して適切に対応できるよう、反論材料をできる限り集めて準備しておくことが大切です。

裁判官の心証が悪くなって、万が一にも不利な判決を出されないよう、裁判では慎重な対応が必要なので、弁護士や司法書士など専門家に相談・依頼するようにしてください。

勝手に連帯保証人にされたら返済義務は生じる?

勝手に連帯保証人にさせられた場合、連帯保証人になることに本人が同意していない以上は原則として無効ですが、返済義務が生じてしまう場合もあります。

以下では、返済義務が生じる場合と生じない場合、それぞれについて解説します。

本人が同意していない連帯保証契約は原則として無効

契約は双方の合意によって成り立つものなので、そもそも本人が同意していなければ無効です。連帯保証人になるという約束は連帯保証契約という契約の一種であり、他人が勝手にサインして本人が同意していない場合は無効となります。

法律上、代理権がない人が勝手に他人の代理をすることを「無権代理」といい、正当な権限が無い行為である以上、勝手に契約を結んでも原則としてその契約に効力は生じません。

1円でも払うと追認したことになって返済義務が生じる

無権代理に関して民法第113条では、以下のように定められています。

 

【民法第113条】

代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない

 

つまり、勝手に連帯保証人にさせられた場合には原則として無効ではあるものの、本人が追認した場合には、連帯保証契約に効力が生じて連帯保証人として返済義務を負うことになります。

債権者から返済を求められた際、1円でも払ってしまうと自分が連帯保証人であることを追認したことになるので、借金を全額払わなければいけません。

身に覚えのない請求が届き、勝手に連帯保証人にさせられていたことが発覚した場合には、追認と見なされるような言動はしないように注意してください。

無効が認められず連帯保証人になった場合の対処法

親や兄弟、友人など、他人が勝手にサインしていた場合でも、追認によって連帯保証契約が有効と認められてしまうと、連帯保証人として借金の返済に応じなければいけません。

以下では、連帯保証人になった場合の対処法を解説します。

請求内容に従って借金を返済する

債権者から借金の返済を求められた場合、連帯保証人は本人に代わって返済する必要があるので、まずは請求内容を確認して返済額や返済期限を確認するようにしてください。

返済が遅れると遅延損害金が発生して負担が重くなったり、債権者が法的な手段に出て資産を差し押さえられたりする可能性があります。連帯保証人は保証人と違い、「まずは本人に請求してほしい」と債権者に主張することはできないので、仮に債権者が主債務者本人に請求せず、最初から連帯保証人に請求してきた場合でも、返済に応じなければいけません。

債務整理を検討する

返済が難しい場合、返済を待ってもらえないか債権者と交渉することになりますが、そもそも返済できない状態で、待ってもらっても払えないのであれば、債務整理を検討することになります。債務整理の主な方法は、任意整理個人再生自己破産3つです。

 

任意整理

任意整理とは、債権者と個別に交渉して利息・遅延損害金のカットや分割での支払いに応じてもらい、合意した内容に基づいて3年(事情によっては5年)ほどかけて返済していく方法です。

個人再生や自己破産のように借金の元金は減りませんが、資産の売却等はせずに済むので個人再生や自己破産に比べると生活への影響は小さくなります。

 

個人再生

個人再生とは、裁判所に再生計画案を提出して認可を受け、再生計画に従って3年(事情によっては5年)ほどかけて返済していく方法です。減額できる割合は借金の総額によって異なりますが、最大で10分の1に減額できます。

再生計画どおりに返済できるだけの収入があることや、借金の総額が5,000万円以下であるなど、個人再生をできる人の条件は決まっていますが、再生計画案が認可されて借金の減額が認められれば、減額後の金額のみ返済すれば良くなります。

 

自己破産

自己破産とは、破産申立書を裁判所に提出して借金の返済を免除してもらう手続きです。任意整理や個人再生と違って借金の返済は免除されますが、財産は一部を除いて処分しなければいけません。

申立てを行うと、本人が返済不能で自己破産をせざるを得ない状態なのかどうかを裁判所が判断します。借金の総額や財産・収入の状況等から総合的に判断して、自己破産が認められれば借金の返済義務はなくなります。

勝手に連帯保証契約にサインした人はどんな罪になる?

勝手に連帯保証契約にサインした人はどんな罪になる?勝手に連帯保証人にさせられた人にとっては迷惑な話ですが、勝手にサインした側は迷惑をかけた程度の話では済まされません。文書の偽造は刑法で規定されている犯罪行為であり、懲役刑を科される可能性があります。

有印私文書偽造罪や有印私文書行使罪なら3月以上5年以下の懲役

勝手に他人の印鑑を押して契約書を偽造した場合や、偽造した契約書を使った場合、有印私文書偽造罪や有印私文書行使罪に問われる可能性があります。有印私文書偽造罪・有印私文書行使罪の刑事罰は、3月以上5年以下の懲役です。

押印がない私文書を偽造する無印私文書偽造罪・無印私文書行使罪の場合は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金ですが、有印私文書偽造罪・有印私文書行使罪は量刑が重くなっています。

親や兄弟、夫、妻でも罪になる

親や兄弟、夫、妻など、連帯保証契約に勝手にサインした人が家族であっても、有印私文書偽造罪や有印私文書行使罪になります。家族だからといって、罪に問われないわけではありません。

刑法では、窃盗や横領など親族間における一部の犯罪の刑を免除する規定がありますが、免除になるのは犯罪の当事者が親族の場合です。連帯保証契約書の偽造での被害者は契約の相手方、つまり債権者なので、親族間の犯罪という扱いにはならず刑は免除されません。

勝手に連帯保証人にされたら弁護士や司法書士に相談すべき理由

勝手に連帯保証人にされた場合、一般の方が自分で対応することはおすすめできません。

債権者との交渉や裁判対応では専門的な知識が必要であり、専門知識のない方がよく分からないまま行動すると、うっかり追認と見なされる行動をして支払義務が生じる場合があるからです。

弁護士や司法書士に依頼するメリットとしては、次のような点が挙げられます。

 

  • 追認と見なされて返済義務が生じることがないよう、専門家の助言を受けながら適切に対処できる
  • 債権者への連絡や連帯保証契約内容の確認など一連の手続きをすべて任せられる
  • 万が一連帯保証人になってしまい返済が必要になった場合、返済計画の作成や債務整理の検討について相談できる

 

弁護士や司法書士に対応を任せれば、自分で債権者と直接交渉せずに済んで負担を減らせる点がメリットです。

まとめ

身に覚えのない請求が来たときには請求内容をよく確認した上で、勝手に連帯保証人にされたことを債権者に伝えることになります。

親や兄弟、友人など、他人が勝手にサインしていた場合、連帯保証人になることを本人が同意していない以上は原則として無効ですし、勝手にサインすることは有印私文書偽造罪や有印私文書行使罪にあたる犯罪行為なので許されるものではありません。

ただし、債権者からの求めに応じて1円でも払ってしまうと、自分が連帯保証人であることを認めた(追認した)ことになり、全額の返済義務が生じてしまう可能性があるので注意してください。借金に関する対応では専門的な知識が必要になり、慎重な対応が求められますので、

勝手に連帯保証人にさせられてお困りの方は「スマサポ」にご相談ください。

この記事を監修したのは、

admin

寺島 能史

東京司法書士会
会員番号: 第6475号
認定番号: 第901173号